コンプラ無用の『たかじんnoばぁ〜』

“素に近い人間”というものを勉強する

愛用のノイズキャンセリング付きイヤホンを家に忘れたので、仕方なく会社に落ちていた100均イヤホンを使ってみて驚いたこと。とんでもなくペネペネな音になってどの曲も全く別の音楽(というか、不明瞭で軽々しい音)に聞こえるのに、やしきたかじんの『やっぱ好きやねん』だけが絶妙にマッチして耳と心に響いたこと。

たかじんの曲は、高音質を謳うスピーカーなんかより、トラックに標準でくっついているようなカーオーディオや、地方のしがないラーメン屋にあるような昔懐かしいラジカセの方が格段に合う。曲から注がれる眼差し、というか耳差しが、飾り気のない市井のレイヤーでしっかりと心を掴む、そんな世界観がたかじんにはある。

ちなみに、関西には縁も所縁もないけど、たかじんにはそれなりの理解も愛もあるつもり。そのきっかけとなったのが、東京でもオンエアされていた『たかじんnoばぁ〜』という番組だった。20数年前、今のご時世では考えられないような、出演者が酒飲んで酔っ払ってタバコ吸ってグチャグチャになる魑魅魍魎のトーク番組に、当時学生だった自分は何故かハマった。

泥酔の見苦しさというより、素に近い人間というものを勉強する上で、ああいった番組はひと役買うのではないか、と、どこかで復活を願いたいのだが、たかじんはもういないし、適当なホスト役も思いつかない。テレビが、日本の会社が、コンプライアンスという言葉を覚えてしまって以来の息苦しさが、この番組には微塵も感じられないのがいい。

ちなみにこの回はお気に入り。内田裕也、安岡力也の強面コンビを前に、たかじんの存在がだいぶ中和されている。まあ、これも脚色なしの“素”ですよ。■bg

bg

1974年生まれ。都下在住。生きるということは「世界の解釈」、そのひとをそのひとたらしめるのは、その「世界の切り取り方」にあると思います。

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