FELT F75、「アルテグラ」ブレーキでストッピングパワーアップ
自転車の“最大のリスク”とは
自転車も、自動車も、乗り物の潜在リスクで最大のものは、「動かないこと」ではなく「止まらないこと」。ロードバイクだって、走れないのは困るが、減速や静止ができないのは生死に関わる問題で、一番厄介なことなのだ。
「FELT F75」に標準で備わっていたブレーキは「シマノBR-R561」と呼ばれるもので、パフォーマンスよりもコスト重視のもの。ここはよりランクを上げたブレーキにチェンジしてみようと思ったのは、ホイール&タイヤを変えた2018年12月のことだった。
メーカーは、コストパフォーマンスに優れたシマノ一択。では、どのグレードにするか。
フラッグシップたる「デュラエース」は、プライス、パフォーマンスともオーバー。標準搭載コンポの「105」にするという選択もあったのだが、今回はシマノ・ヒエラルキーでは105の1つ上、上から2番目の「アルテグラ(BR-R8000)」とした。ブレーキに限れば前後セットで1万円強で買えてしまうというのだから、わざわざ105にしなくてもいいだろう。命を預ける以上、より安心感のある上位グレードを選んだ方が賢明である。
“片手で握る”から“両手で締め付ける”ような確かさ
- シマノ BR-R8000 前後セット 1万1218円
- シマノ インナーエンドキャップ φ1.6mmブレーキ用 10個入り Y62098070 218円
- BIKE HAND(バイクハンド) BIKEHAND YC-193 ブレーキシューチューナー YC-193 495円
をアマゾンにて購入(価格は当時のもの)。ブレーキレバーやケーブルは流用するも、ケーブルの先に付けるキャップは新調しなければならなかった。
手元に届いた「ULTEGRA」と書かれた黒い箱に、思わずグッとくる。ネーミングから、デュラエースよりも“至高のイメージ”を強く抱いてしまうのは自分だけだろうか。
今回購入したアルテグラのブレーキは、ホイールのリムを左右のブレーキシューで挟み込み制動力を効かせる「リム・ブレーキ」と呼ばれるものの一種で、昨今普及が著しい「ディスク・ブレーキ」ではない。アルテグラのそれは、左右からしっかりと力を加えシューをリムに押し付けるべく、シューを支えるブレーキアームが剛健なつくりとなり、左右に金属板をわたして剛性をアップさせているというものだ。
車体へのマウント方法は中央のボルト1本。左右で2本締めする「ダイレクト・マウント・ブレーキ」ではない。つまり構造的にとてもシンプルで、取り付けから取り扱いまで理解がしやすいのがポイントである。
「ブレーキシュー・チューナー」とは、ブレーキシューの位置の調整に使う便利道具。シューは進行方向に向かってトーイン、つまり真上から見て「ハ」の字にするようにとマニュアルに書いてある。このプラスチックの板を、シューとリムの間に挟めば、このポジション取りが簡単に行えるということだ。
アルテグラの装着を終え、見た目にも屈強さが滲み出るようになったF75。実際、ブレーキングの感覚は向上しており、2019年に榛名山をのぼった際には、下り坂、しかもある程度のスピード以上での頼もしさが格段に上がっていた。
例えるなら、以前はリムを“片手で握る”程度の効きだったのが、交換後は“両手でグッと締め付ける”ような確かさ。1万円程度の出費で得られるには十分ともいえる安心感だ。
しっかりと止まらぬ自転車には、ちょっとでも上級のブレーキを。転ばぬ先の杖ということである。■bg