「成功」のバスケットボール、「失敗」のサッカー〜Bリーグ初観戦の雑感〜
Jリーグサポーター歴10年、Bリーグ初観戦
サッカーファンを自認し、JリーグFC東京の試合に足繁く通ってきたこの10年のなかで、2016年9月にスタートしたバスケットボールのプロリーグ「Bリーグ」には興味を持っていたが、この度ようやく初観戦の機会が巡ってきた。時は2020年1月25日、場所は東京・立川市にある「アリーナ立川立飛」、対戦カードはアルバルク東京と富山グラウジーズだった。
この日は気温10度、冬の寒さが身に沁みる曇り空だったものの、屋内ゆえに会場は暖房がガンガンきいており至極快適。3000人のキャパシティがあるアリーナ立川立飛はほぼ満員で、老若男女のオーディエンスの熱気も加わり、厚手の上着を脱いでも暑さでのぼせそうなくらいだった。
そもそもバスケットボールは、冬の間に体育館でできるスポーツが少ないという問題を解決するため、1891年にアメリカ北東部マサチューセッツ州の国際YMCAトレーニングスクールで発案されたものというから、こうした便宜も当初から織り込み済みだったのだ。
素早いテンポ、胸のすく3ポイントシュート
試合はキックオフならぬ「ティップオフ」で開始。序盤から東地区首位の東京がリードするも、踏ん張る富山も要所で追い上げを見せ、最終的に82対71でホームチームが2桁の差をつけ勝利を奪ったものの、終始観るものを飽きさせない展開だった。特に東京が優れていたのが3ポイントシュートで、遠い場所から放たれたボールがリングに吸い込まれると、ビギナーながらこちらも思わずガッツポーズを取ってしまうくらい、胸のすくような気持ちの良さを味わえた。
28m×15mのコートを縦横無尽に駆け回る5人のプレーヤーのパス回しも、また攻守の入れ替わりも、サッカーとは違い実に速い。大雑把にいえば、バスケットボールの勝敗は、この素早いテンポのなかで自分たちの流れをつくり、得点を量産していくことで決まるのだろう。
10分ごとの4つのクォーターに分けられたゲームは、ボールがコートから出たりファウルがあったり、またファウルの数が貯まると相手に与えられるフリースローがあったりと、かなり頻繁に時計が止まるため、ゆうに1時間半はかかる。だが競技時間については厳格に管理されており、天井に吊り下げられたスクリーンには秒単位で時が刻まれていた。
プレーは小刻みに進みつつ“間延び感”がないのは、今回の試合がそれなりに白熱したことと、アメリカ発祥らしく、チアリーディングや催しによるショーアップのおかげだろう。あっという間に試合終了。Jリーグと観客数が一桁違うこともここでは幸いし、帰りの混雑もさほど気にせず家路についた。
「成功」のバスケットボール、「失敗」のサッカー
Bリーグ初観戦を終えてあらためて思ったのは、バスケットボールはとにかくスコアを累々と増やしていくスポーツだということだ。Bリーグの公式サイトによれば、選手権上位につけるチームは1試合平均で80点台を稼ぎ出しており、シュートを打つ場所によりポイントは異なるものの、単純計算すれば1分間に2点は入っていることになる。
それに比べて、サッカーは驚くほどロースコアだ。2019年のJリーグの戦績を振り返ると、リーグを制覇した横浜Fマリノスの2.0点を最高に、軒並み1点台に留まる。90分戦って最少得点の1点で雌雄が決することも、また両者無得点のままドローということもめずらしくはないのである。
やや強引に特徴付けるなら、バスケットボールは「小さな成功=得点」の積み重ねで勝ち負けが決まるスポーツだといえる。観る側としては、次々とボールがリングを通るたびに一喜一憂を繰り返し、またハイスコアな競技ゆえに得点を続ければ逆転も十分可能と思われ、試合中、緊迫感が維持されやすい。
一方サッカーは、試合時間のほとんどのプレーが得点に結びつかないという意味で、「多くの失敗」を積み重ねるスポーツである。そのうち致命的な失敗が失点であり、数少ない好機を逃さずにゴールネットを揺らした方が勝利をつかむ。2点差なら状況次第で引き分けか、奇跡的に逆転も視野に入れて良さそうなものが、3点差をつけられると絶望的といわざるを得ず、さらに応援しているチームがたったの1点も奪えなかった日には、「カネ返せ」と本気で怒りたくなることもある。
「成功」のバスケットボール、「失敗」のサッカー。どちらが良い悪いということでもないし、たんなる趣味の問題ではあるけど、自分により合うのは、「失敗の妙味」が存分に味わえるサッカーではないだろうか。失敗に次ぐ失敗なんて、人生を振り返れば身に覚えありすぎでしょう(自分だけか?)。
何はともあれ、スポーツが地域や社会に根付いているというのは文化的な豊かさのあらわれ。我が街のサポートすべきチームが、また1つ増えたようで嬉しい。■bg